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【2024/03/19 16:23 】 |
責任限定契約の対象者拡大に反対する(その2)
責任限定契約の対象者を社外以外の役員(監査役・業務非執行取締役)に拡大するという案がナンセンスであることは既に述べた。

http://kaishahou.blog.shinobi.jp/Entry/8/

一点補足する。
 
現行制度に
「監査役・業務非執行取締役が軽過失で損害賠償責任を負った場合において、取締役会が当該役員の責任減免を決議(または株主総会に提案)してくれなければ、当該役員は全額を賠償せざるを得ない」
という問題があるのは事実である。

しかし、だからといって責任限定契約を許容すべしというのは短絡的すぎる。
例えば
「監査役・業務非執行取締役については、軽過失により賠償責任を負った場合、その減免を請求することができる旨法定する」
という方法があろう。
これならば、悪意・重過失がないことの立証責任を役員側に負わせた上で、責任減免の検討を確実にさせることができるのだ。

あらためて言う。
要綱案によれば、オリンパスの元取締役が監査役に転じた途端責任限定契約を締結できるのだ。
取締役時代の賠償責任が時効にかかってしまえば、監査役としての責任を追及せざるを得ない。
悪意を持って不正の露見を防いだと思われる監査役でも、責任限定契約があれば、彼が
「確かに過失はありましたが、悪意重過失はありません」
と主張すれば、悪意重過失は追及側が立証しなければならない(※)。

社外以外の役員にそのような保護を与えることによるモラルハザードと、その回避方法をよくよく考えるべきである。

(※)実は、監査役を例にとるのはあまりよくない。監査役は独任制だから、自らの担当分野外でも不正の事実を知れば指摘すべきである。取締役時代に為した不正を指摘しない監査役の悪意の立証は比較的容易であろう。
(本当はその1で出した日本振興銀行の業務非執行会長の方がよい例になるだろう)
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【2013/11/12 00:17 】 | 要綱関係 | 有り難いご意見(0)
商事法務N0.1978 【パート2: 岩原教授による要綱解説より】
キャッシュアウトの価格決定の申立期間について、岩原教授は以下のように説明しておられる。
 
*********以下引用********
 
知り得なかった売渡株主等が価格決定の申立てができる可能性を高める方法として、取得日後20日間も価格決定の申立ができるとする案が事務局から提案された。(中略)しかし、これに対しては、特別支配株主が取得日から20日間の利息を覚悟して取得日から20日間を過ぎて対価を支払えば、少数株主は価格決定の申立ができなくなってしまう・・・等の再反論があった。
 
*********引用以上***********
 
どうやら、岩原教授は、事務局が第20回部会で提示した新たな工夫
「価格決定の申立期間を、例えば、売渡株式の対価として交付される金銭に係る弁済の提供がされた日後20日間を経過する日までの間に伸長」
をご認識ないようだ。
この案は、上記引用の「再反論」をほぼカバーできるのに、認識もされずにお蔵入りになってしまったわけだ。
そのような改善ポイントをきちんと強調できなかった事務局にも問題はあるかもしれないが、岩原教授/部会長、それをスルーして改案をお蔵入りとは、ちょっと悲しいぞ。

私の主張 ↓
http://kaishahou.blog.shinobi.jp/Entry/12/


【2013年10月6日追記】
私が脚注を見落としていた。
「価格決定の申立期間を、例えば、売渡株式の対価として交付される金銭に係る弁済の提供がされた日後20日間を経過する日までの間に伸長」
 については、脚注で言及されていた。
しかし、当初の「取得日後20日間」は、議論の価値もない叩き台レベルの案なのに本文で述べ、実質的議論の対象となりうる「弁済の提供がされた日後20日間」は脚注に回すとは、やはりご認識がよろしくない。
また、その脚注においては「弁済の提供がされた日後20日間」は検討された旨記載されているが、部会議事録を見ると、「検討」というに値する議論はほとんどされずに終わっているのである(上記http://kaishahou.blog.shinobi.jp/Entry/12/)。
【2012/10/28 00:22 】 | 要綱関係 | 有り難いご意見(0)
商事法務N0.1978 【パート1: 座談会ネタ】後編
座談会から、さらに2点。

【その2: 座談会】 社外要件における「重要な使用人」

前田教授は、「取締役会で選解任すべき使用人と考えるのがいい」とおっしやっている。
極めて自然である。
少なくとも現在の要綱の趣旨そのままで法案が作られれば、岩原教授が解説で述べられたような解釈(会社法362条4項3号より狭く解する)は無理があろう。

私の主張 ↓
http://kaishahou.blog.shinobi.jp/Entry/10/
 
【その3: 座談会】 支配株主の異動を伴う公募増資
 
引受証券会社1社が総議決権の過半数を引き受けると‥・という議論はされているが、証券会社は分けるが、公募に応じた投資家が1名だけ、という可能性は議論されていない。
誰か、プレミアム公募やってみたらどうだ??

私の主張 ↓
http://kaishahou.blog.shinobi.jp/Entry/11/
【2012/10/28 00:16 】 | 要綱関係 | 有り難いご意見(0)
商事法務N0.1978 【パート1: 座談会ネタ】前編
商事法務N0.1978(10/5-15合併号)は、突っ込みどころ盛りだくさんであった。
いくつかに分けてコメントしたい。


【その1: 座談会】親子会社間における社外監査役の兼任

まずは、 親子会社間における社外監査役の兼任である。
座談会において、このテーマに対し、前田教授が正面から答えている。
 
*********以下引用********
 
親会社監査役が子会社の社外監査役を兼任できないのは、・・・親子間に利益衝突がある場面で、純粋に子会社の利益だけを考えた行動を期待しにくいというのが理由
 
*********引用以上***********
 
また、「社外査役に求められる独立性の性質は社外取締役と違いはない」とも述べておられる。

大いに疑問である。
監査役に期待されるのは、「子会社の観点から不正」「親会社の観点から不正」といった一定の立場に基づく判断ではなく、より客観的な立場から見た公正不公正の判断である。
たとえば、ある場面において、親会社が子会社から不当に搾取しているように見えるとしても、客観的にトータルに見て不当な搾取ではないという心象が得られれば、追及すべきではない。
また、子会社が純粋に利益を得ている場合でも、それが客観的に見て親会社の不当な利益供与であれば、監査役はそれを止めるべきである。
社外監査役に期待される独立性はそのような客観性である。
社外取締役に期待される独立性は、(経営陣が大株主の方を向いて行動するのに対し、)純粋に会社の利益を考えて行動するという主観的独立性であり、社外監査役に求められる客観的独立性とは大いに異なるのである。
 
そして、社外監査役の客観性は、親子兼務によって一層向上する。
利益衝突の場面において両面から本質を見ることができるからである。

この対談を読み、「やはり、親子会社間における社外監査役の兼任は認めるべきだ」との思いを一層強くした次第である。

あらためて言う。
要綱に賛成している人は、ぜひ、親子で共通の社外監査役を置くことで生じる弊害を、「具体的に」述べてほしい。

私の主張 ↓
http://kaishahou.blog.shinobi.jp/Entry/13/
【2012/10/28 00:13 】 | 要綱関係 | 有り難いご意見(0)
親会社社外監査役には子会社における社外性を認めるべきである
社外監査役の要件として、「親会社の監査役でないこと」が加わることとなった。
社外監査役に必要なのは業務執行者からの独立性であるところ、親会社の役員を兼務している子会社監査役には、親会社役員と子会社監査役の立場に潜在的な利益相反が存するからとされている。
すなわち、親会社の意向を気にして子会社の立場から自由にものが言えず独立性に問題が不足する可能性がある、という理屈なのであろう。
しかし、以下に述べるとおり、親会社の社外監査役までに子会社における社外性を認めないのはメリットより弊害が大きい。
 
一般に、親会社の者を子会社監査役にすると、以下のメリット・デメリットがあろう。
1)メリット1: 子会社経営陣の牽制になる(その者が子会社経営陣より上位であれば特に)
2)メリット2: グループ内の事情を知った上で監査できる。特に、グループ内部統制を子会社に及ぼし、内部統制の共有強化に資する
(体制構築=業務執行はできないので口を出すだけだが)
3)デメリット1: 親会社が子会社から収奪している場合や親会社が子会社に不正な行為を強制している場合に親会社に対して声を上げられない
4)デメリット2: 親会社と子会社が結託して不正な行為を行っている場合にそれを指摘できない
上記3)4)から、親会社社内者である子会社監査役には利益相反が潜在するという主張は正当である。親会社の社内監査役が子会社の社外監査役になるならば、たしかにそのような懸念があろう。
 
しかし、親会社の社外監査役を子会社の監査役にする場合は、上記3)4)は当てはまらない。
上記3)4)のような事実を発見すれば、親会社でそれを指摘する独立性を有しているはずであり、それができないようでは、親会社における社外監査役の資質もないということだからである。
 
一方、親会社の社外監査役を子会社の監査役にすれば、以下のメリットが加わる。
1’)メリット1’: 親会社の経営陣も一目置く人だから、子会社経営陣の不正行為への牽制が一層強くなる
5)メリット3: 子会社からの収奪等、親会社の不正な行為を発見する機会が増加し、親会社における牽制力が強化される
 
法制審の提案・議論は、「利益相反」概念に対する過剰反応の傾向が見られる(本項目以外にも、要綱案には入らなかった「子会社少数株主の保護」でフォーカスを親子間の利益相反に絞ったり、取締役会の監督機能として「利益相反の監督」を挙げるなど)。
本項目=社外監査役の要件議論については、概念としての「利益相反」ではなく、利益相反の具体的場面を想定して考えることが必要である。

本項目について、第21回部会で委員から疑問が呈された時、事務局(坂本幹事)は、「親子両方に対し善管注意義務を負う=一方を優先するわけにはいかない場合がある」としつつ、「具体的なケースは申し上げにくい」と発言した。
続けて、「一番わかりやすいものとして・・・監査役は取締役の善管注意義務違反まで見る・・・そういうところまで踏み込むということになってくると、取締役と監査役の違いを踏まえても親子での社外の兼務を認めるのは相当でない場面が生じてくる」と述べている。
これも、上記で私が述べたとおり、親会社の社外監査役であれば、そのような善管注意義務違反を発見すれば、親会社でそれを指摘する独立性を有しているはずであり、それができないようでは、親会社における社外監査役の資質もない。
野村幹事が「子会社の方で取締役が経営判断上著しく不合理な親子間取引を行っているような場合に、子会社の社外取締役(原文ママ。社外監査役か)は差止請求権を行使すべき場合でも、親会社監査役としては違う判断をするということが必要な場合もあるかもしれない」とフォローしたが、この例も、親会社・子会社とも社外監査役であれば該当しない。
 
要綱は、抽象的皮相的な思考で利益相反の可能性を過大視している。
具体的本質的に考えれば、親子で共通の社外監査役を置くことは、内部統制強化のメリットの方が大きいはずである。
更に、別の人材を探さなければならない実務上の困難を回避できるし、親子をトータルに理解してくれるから親子それぞれ別々の社外監査役にグループの状況を説明しなければならない非効率も回避できる。
 
要綱に賛成している人は、ぜひ、親子で共通の社外監査役を置くことで生じる弊害を、「具体的に」述べてほしいものだ。
【2012/09/17 16:57 】 | 要綱関係 | 有り難いご意見(0)
さりげなく消えたポイント(特別支配株主によるキャッシュアウト~一般株主の救済)
「特別支配株主による株式売渡請求」においては、中間試案から要綱にかけていくつか変化があった。その中で気になるのは、一般株主の扱いである。
 
振替株式については、売渡請求を通知ではなく公告で代替するのはやむを得ない。常に保有者が流動する振替株式では、基準日を設定するか、振替を廃止しない限り通知すべき相手を確定できないからである。(売渡請求については、その性質上、基準日の設定は不可能)
そうなると、一般株主については売渡が行われその代金を受領して初めて売渡の事実を知ることが多く、その保護が問題となる。売渡を知った時に既に著しく低い価格で買い取られていて文句も言えない、という事態をいかに評価し、いかに対処するか、ということである。
 
第20回の部会において、内田関係官の提案説明でこの点について述べられている。
すなわち、
「公告による代替を認めることに対する懸念への対応としては、公告による代替を認めないものとすることが当然に必要となるわけではなく、これとは別のアプローチとして、売渡株式の取得が行われたことを売渡株主が知り得るときから一定期間にわたって価格決定の申立を認めることでも足りると思われます。
そこで、対象会社が公開会社である場合に、公告による代替を認めることとする場合には、公告による代替がされた場合における価格決定の申立期間を、例えば、売渡株式の対価として交付される金銭に係る弁済の提供がされた日後20日間を経過する日までの間に伸長することについても、検討の余地があるものと存じます」
である。
しかし、この回の部会においては、公告による代替について若干の討議はなされたものの、上記の「別のアプローチ」については特段の議論は出ていない。
そして、第22回部会においては、上記の「別のアプローチ」は、事務局からの提案内容からすっかり落ちており、そのことについて何の説明もなされなかった。
 
おそらく、第20回部会の
「上場会社で9割株式を持つというような場合には、二段階TOBが行われているのが通常であって、実際上株主が知っているから振替株式制度上予定されている公告だけでも足りる」
という多数意見を拡張解釈し、「別のアプローチ」による手当も不要、としたものであろう。
 
しかし、当該多数意見は、通知を公告で代替することに関するものであり、事後救済について及ぶものではない。
また、TOBの後、すみやかに売渡請求がなされるという想定が正しいかの検証がなされていない。
例えば特別支配株主が残り10%の買収資金を手配するためにTOB後売渡請求まで相当の時間がかかることは想定されないだろうか(浮動株条件による上場廃止という時限性はあるが)?
また、TOBで85%を取得した後5%ブロックを持つ株主の保有分が片付き、TOB後相当期間経過したある時点で90%を超過することとなるようなことは考えられないだろうか(例えば当該5%ブロックを自社株買いするなど)?
90%取得後売渡請求まで相当の時間がかかる場合や、いつの間にか90%を超過する場合があるならば、その長期間公告をウォッチすることを株主に期待し、売渡以降は無効訴訟しか認めないのはフェアだろうか?
 
もっとも、価格決定請求を認めたところで、申立コストを考慮すれば、それを使うメリットがあるのは相当大きな株主のみである。
その「株を持ち続ける少数株主は泣いて消えろ」、という発想は、全部取得条項株式の取得決定時と同様であろう。
(全部取得条項を付す総会決議とTOBがパラレルであり、その段階で株を売らなければ「後は二段目のスクイーズアウトで泣くのを覚悟せよ」ということである)
本件も、「価格決定請求で争う実益があるほどの大きな株主なら売渡請求の情報くらいキャッチするから事後の救済は不要」くらいな考えか。
 
ああむなしいことよ。
 
 
【補記余談】
<その1>
事務局は、振替株式については公告による代替が「義務付けられている」から、本件においても公告で代替するのが当然、という論調で提案している。
しかし、公告による代替は、実質株主を確定できない振替株式の性質上仕方ないための、いわば必要悪である。本来は通知が望ましいに決まっている。
 
<その2>
某社MBOの連想ではないが、TOB成立後業績上方修正を発表、株価は上昇しているにもかかわらず、特別支配株主はTOB価格と同じを売渡価格を提案して買い叩く・・・というような事案の発生が想定される。
 
<その3>
上記の「別のアプローチ」で、20日間の起算日は、中間試案では売渡日(「取得日」)であったが、上記第20回部会では弁済の提供がされた日とされた。当然ながら妥当である(弁済提供日の見える化は必要となるが)。
株主名簿管理人において、売渡日現在の株主を確定し支払通知書を準備し発送するための期間は現在なら2,3週間必要だからである。
(先般、ライツイッシューを使いやすくするために証券代行機関における株主確定~書類発送を1週間程度に短期化する検討が行われている旨の報道があった。
早期化しても1週間だから、中間試案の「売渡日から20日間」はまったく非現実的であった)

【2012/09/16 10:30 】 | 要綱関係 | 有り難いご意見(0)
「支配株主の異動は経営者ではなく株主が決定すべし」は理屈が通らない
支配株主異動を伴う増資には、結局、一般株主の相当数が求めた場合にも株主総会が必要となることになってしまった。
パブコメに私が申し出た意見でも述べたが、上記案の根拠となった「支配株主の異動は経営者ではなく株主が決定すべし」という概念はおかしい。
 
私のパブコメへの意見においては、その根拠となる例としてTOBを挙げた。
すなわち、現在支配株主ではない者からTOBがかけられた場合は、少数株主には株主総会を要求する余地はなく、TOBに応じるか応じないかの選択しかないし、それに問題があるとは考えられないのである。
 
ここで、もう一つ、非現実的ではあるが例を追加しよう。
プレミアム公募である。
市場価格よりも高い価格を設定して公募すれば、一般株主は応募しまい。株を買い増ししたければ市場で買えばより安く買えるのだから。
しかし、新支配株主は応募して公募株式の全部または大半を取得するインセンティブがあるのである。
(要綱案のような規定が設けられても、複数証券会社が引き受ければ、株主総会は不要となろう。)
想定外の者が支配権を狙って応募してくる可能性もあり、その場合には親引け制限ゆえに割当を確実に得ることができないことから、現実的に利用される可能性は少ないと思うが、少数株主が支配株主を選ぶ権利などないことの根拠にはなる。
また、同時に、支配権にはプレミアムが付くべきこともわかるはずだ。
 
あらためて主張したい。
支配権の異動を伴う増資を規制するなら、その保護法益は本来既存支配株主の支配権であるべきで、
「(既存支配株主が存在する場合には、)支配株主の異動は経営者ではなく“既存支配株主が”決定すべし」
が正当である。
TOBや上記のプレミアム公募を想定すればわかるとおり、少数株主には支配株主を選ぶ権利がなくて当たり前、選べるのは価格である。
要綱案の如く、支配株主異動を伴う増資に既存支配株主がない場合にも株主を要求する制度を作ることは政策的に仕方がないとしても、それはあくまで政策、大人の事情というべきである。制度の出発点として「支配株主の異動は経営者ではなく株主が決定すべし」などという理屈の通らない理念を掲げるべきではない。
 
なお、支配株主の異動有無を、子会社の保有する議決権と合算して判断することとしたのは改善として評価できる。但し、実質保有者の概念ではないので、ファンドを使う等の方法で潜脱できるかもしれない(部会では、事務局が規定を工夫するとは言っていたが)。

また、中間試案においては第三者割当が対象とされていたが、要綱最終案では公募も対象となった。これについては論理の一貫性が若干向上したものとは言える。しかし、複数証券会社が引き受ければ潜脱できるようでは意味がないし、部会でも議論されたように一証券会社がまとめて引き受ける(本来問題ないような増資でも)のを萎縮させるようでも困る。また、(公募に限ったことではないが、)↓ の川井先生のブログにもあるとおり、増資日程の長期化の問題もある。これらを考えると弊害の方が大きいように思うがいかがか。

(現時点では、公募への拡張について議論したブログ等は、「弁護士川井信之のビジネス・ロー・ノート」9/10エントリー「会社法改正要綱(案)を読む(6)~支配株主の異動を伴う募集株式の発行等」)」
http://blog.livedoor.jp/kawailawjapan/archives/5906201.html
以外に発見できない)

【2012/09/12 22:39 】 | 要綱関係 | 有り難いご意見(0)
「重要な使用人」
商事法務1975号の岩原教授による要綱案解説。
社外役員の要件として「支配人その他重要な使用人でないこと」を追加することについて、その「重要な使用人」は
「会社法362条4項3号でいう”重要な使用人”より限定された者になろう。」
と述べておられる(※)。

362条と同じ「支配人その他重要な使用人」という文言を使う限り、実務界でそのような解釈を採るのは無理であろう。
362条との相違が明らかになるよう法案が立案されることを強く希望するのみである。

なお、大手信託銀行では、数十人の支配人が存在すると聞く。
法案が要綱案の最低限で決着したとしても、少なくとも、それら多数の支配人すべてについては調査が必要となることになる。
二親等以内であれば調査は容易と一見思われるであろう。しかし、配偶者の兄弟などは疎遠である可能性もあり、完全な調査を実施するには相応のリスクが残る。
社外性を左右する基準としては、支配人ですら拡張し過ぎかもしれない。


(※)「具体的には、執行役員のような者はこれに含まれるが、有力な支店の支店長等は当然には含まれるわけではないと考えられる」と例示されている。
【2012/09/12 22:14 】 | 要綱関係 | 有り難いご意見(0)
責任限定契約の対象者拡大に反対する
要綱案では、責任限定契約の対象者の基準が、社外性から業務執行有無に変わることとなっている。
以下に述べるとおり極めてナンセンスである。
 
第一に、制度の目的である。
現行制度では、「責任限定契約により社外から人材を招聘しやすくする」という目的が説明できた。業務執行を基準とすることには、そのような積極説明、あえて言えば大義がない。
「社外性の要件を厳しくすることに伴い、今まで責任限定契約を締結できた人ができなくなってくる」(第23回会議)、あるいは、「自ら業務執行に関与せず、専ら経営に対する監督・監査を行うことが期待される者については、その責任が発生するリスクを自ら十分にコントロールすることができる立場にあるとは必ずしもいえない」(中間試案の「補足説明」)という考え方は、消極的な説明であり、積極的な必要性の根拠としては不十分である。
 
第二に、副作用である。
直前期まで業務執行していた人が、業務非執行取締役や監査役になった途端に責任限定契約の対象となり得ることは妥当なのか?
「日本振興銀行の業務非執行の取締役会長である木村剛氏」「オリンパスの社内出身監査役」が責任限定契約締結可能になるのである。
前者のように、創業者・創業家の人間が業務非執行取締役ながら取締役会に出席し、会議の方向性を事実上支配することは大いにあり得ることである。
また、社内出身監査役が、自らの過去の担当分野や親しい人の業務に対し重過失にならない程度に手心を加えることも大いにあり得ることである。
 
軽過失に起因する責任については、必要なら、現行制度(法425条)に基づき株主総会(場合によっては取締役会---法426条)決議を経て個別に責任減免すればよいではないか。
業務執行有無による差異は、最低責任限度額の差異にあらわれており、それで十分であろう。
 
責任限定契約にしても責任減免にしても、その恩恵が享受できるのは、会社法423条の責任が存し、かつ、悪意重過失がない場合、すなわち、軽過失による任務懈怠の場合である。
責任限定契約が存在する場合に、最低責任限度額を超える額の賠償責任を追及するには、追及側が役員の悪意重過失の存在を立証する必要がある。
一方、責任限定契約がない場合に責任を減免するには、対象の役員、ひいては、減免を決議する取締役会の出席取締役が、悪意重過失がなく軽過失であることの説明責任を負う。
この違いは大きい。「日本振興銀行の業務非執行の取締役会長である木村剛氏」になぞらえて考えていただきたい。
彼に責任限定契約があればどうなる?
悪意を問うには、例えば、取締役会(やオブザーバー名目で出席する社内の会議)で周囲を恫喝し、収益のためにリスクが著しく高い資産への集中投資を行うよう議論を誘導したことを、追及側が立証しなければならないのだ。
そのような保護を社内の者に与えるべきであろうか?
一方、責任限定契約がない場合にその責任を減免しようとするなら、まず当該減免が取締役会に諮られることになり、それに異議をとどめなかった取締役は賛成したことになるので、不当な決議にはブレーキがかかる。
 
法制審ではほとんど議論がなされていない。
わずかに、第23回会議で荒谷委員が社外役員の有無との関係を問うたのみである。第21回でも議題には入っていたがまったく議論がなかった。
(今回の法制審議論は、とにかく概念で議論し具体的場面の想像が欠けるものが多い。)
もう法制審で議論されることがない今、学界・実務界・国会で議論されることを期待するのみである。


【9/5追記】
「社外性の要件を厳しくすることに伴い、今まで責任限定契約を締結できた人ができなくなる」という観点についても、反論を提示したい。

「今まで責任限定契約を締結できた人」とは、畢竟、親会社の社内者や、社内役員・大株主の親族等である。
この類型の人は、自ら進んで子会社の監督に携わるインセンティブがある。
ゆえに、「責任限定契約により招聘を容易にする」という理屈が立たず、責任限定契約の必要性が説明できない。
それどころか、親会社・社内役員・大株主との利益相反の可能性を考慮すれば、責任限定契約は、「日本振興銀行の業務非執行の取締役会長である木村剛氏」になぞらえて例示したとおり、モラルハザードを助長する保険として働き、むしろ有害である。


「重要な取引先」が社外役員から排除されれば、その限りにおいて「社外性の要件を厳しくすることに伴い、今まで責任限定契約を締結できた人ができなくなる」ことへの手当が必要だったかもしれないが、今回の要綱においては、上記のとおり、手当は無用、むしろ有害なのである。

(私の関係する会社では、現在、取引先出身の社外役員とは責任限定契約を締結しているが、親会社業務執行者である社外取締役とは責任限定契約を締結していない。それが良識であろう。)
【2012/09/03 23:53 】 | 要綱関係 | 有り難いご意見(1)
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