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要綱案では、責任限定契約の対象者の基準が、社外性から業務執行有無に変わることとなっている。
以下に述べるとおり極めてナンセンスである。 第一に、制度の目的である。 現行制度では、「責任限定契約により社外から人材を招聘しやすくする」という目的が説明できた。業務執行を基準とすることには、そのような積極説明、あえて言えば大義がない。 「社外性の要件を厳しくすることに伴い、今まで責任限定契約を締結できた人ができなくなってくる」(第23回会議)、あるいは、「自ら業務執行に関与せず、専ら経営に対する監督・監査を行うことが期待される者については、その責任が発生するリスクを自ら十分にコントロールすることができる立場にあるとは必ずしもいえない」(中間試案の「補足説明」)という考え方は、消極的な説明であり、積極的な必要性の根拠としては不十分である。 第二に、副作用である。 直前期まで業務執行していた人が、業務非執行取締役や監査役になった途端に責任限定契約の対象となり得ることは妥当なのか? 「日本振興銀行の業務非執行の取締役会長である木村剛氏」「オリンパスの社内出身監査役」が責任限定契約締結可能になるのである。 前者のように、創業者・創業家の人間が業務非執行取締役ながら取締役会に出席し、会議の方向性を事実上支配することは大いにあり得ることである。 また、社内出身監査役が、自らの過去の担当分野や親しい人の業務に対し重過失にならない程度に手心を加えることも大いにあり得ることである。 軽過失に起因する責任については、必要なら、現行制度(法425条)に基づき株主総会(場合によっては取締役会---法426条)決議を経て個別に責任減免すればよいではないか。 業務執行有無による差異は、最低責任限度額の差異にあらわれており、それで十分であろう。 責任限定契約にしても責任減免にしても、その恩恵が享受できるのは、会社法423条の責任が存し、かつ、悪意重過失がない場合、すなわち、軽過失による任務懈怠の場合である。 責任限定契約が存在する場合に、最低責任限度額を超える額の賠償責任を追及するには、追及側が役員の悪意重過失の存在を立証する必要がある。 一方、責任限定契約がない場合に責任を減免するには、対象の役員、ひいては、減免を決議する取締役会の出席取締役が、悪意重過失がなく軽過失であることの説明責任を負う。 この違いは大きい。「日本振興銀行の業務非執行の取締役会長である木村剛氏」になぞらえて考えていただきたい。 彼に責任限定契約があればどうなる? 悪意を問うには、例えば、取締役会(やオブザーバー名目で出席する社内の会議)で周囲を恫喝し、収益のためにリスクが著しく高い資産への集中投資を行うよう議論を誘導したことを、追及側が立証しなければならないのだ。 そのような保護を社内の者に与えるべきであろうか? 一方、責任限定契約がない場合にその責任を減免しようとするなら、まず当該減免が取締役会に諮られることになり、それに異議をとどめなかった取締役は賛成したことになるので、不当な決議にはブレーキがかかる。 法制審ではほとんど議論がなされていない。 わずかに、第23回会議で荒谷委員が社外役員の有無との関係を問うたのみである。第21回でも議題には入っていたがまったく議論がなかった。 (今回の法制審議論は、とにかく概念で議論し具体的場面の想像が欠けるものが多い。) もう法制審で議論されることがない今、学界・実務界・国会で議論されることを期待するのみである。 【9/5追記】 「社外性の要件を厳しくすることに伴い、今まで責任限定契約を締結できた人ができなくなる」という観点についても、反論を提示したい。 「今まで責任限定契約を締結できた人」とは、畢竟、親会社の社内者や、社内役員・大株主の親族等である。 この類型の人は、自ら進んで子会社の監督に携わるインセンティブがある。 ゆえに、「責任限定契約により招聘を容易にする」という理屈が立たず、責任限定契約の必要性が説明できない。 それどころか、親会社・社内役員・大株主との利益相反の可能性を考慮すれば、責任限定契約は、「日本振興銀行の業務非執行の取締役会長である木村剛氏」になぞらえて例示したとおり、モラルハザードを助長する保険として働き、むしろ有害である。 「重要な取引先」が社外役員から排除されれば、その限りにおいて「社外性の要件を厳しくすることに伴い、今まで責任限定契約を締結できた人ができなくなる」ことへの手当が必要だったかもしれないが、今回の要綱においては、上記のとおり、手当は無用、むしろ有害なのである。 (私の関係する会社では、現在、取引先出身の社外役員とは責任限定契約を締結しているが、親会社業務執行者である社外取締役とは責任限定契約を締結していない。それが良識であろう。) PR |
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