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社外監査役の要件として、「親会社の監査役でないこと」が加わることとなった。
社外監査役に必要なのは業務執行者からの独立性であるところ、親会社の役員を兼務している子会社監査役には、親会社役員と子会社監査役の立場に潜在的な利益相反が存するからとされている。 すなわち、親会社の意向を気にして子会社の立場から自由にものが言えず独立性に問題が不足する可能性がある、という理屈なのであろう。 しかし、以下に述べるとおり、親会社の社外監査役までに子会社における社外性を認めないのはメリットより弊害が大きい。 一般に、親会社の者を子会社監査役にすると、以下のメリット・デメリットがあろう。 1)メリット1: 子会社経営陣の牽制になる(その者が子会社経営陣より上位であれば特に) 2)メリット2: グループ内の事情を知った上で監査できる。特に、グループ内部統制を子会社に及ぼし、内部統制の共有強化に資する (体制構築=業務執行はできないので口を出すだけだが) 3)デメリット1: 親会社が子会社から収奪している場合や親会社が子会社に不正な行為を強制している場合に親会社に対して声を上げられない 4)デメリット2: 親会社と子会社が結託して不正な行為を行っている場合にそれを指摘できない 上記3)4)から、親会社社内者である子会社監査役には利益相反が潜在するという主張は正当である。親会社の社内監査役が子会社の社外監査役になるならば、たしかにそのような懸念があろう。 しかし、親会社の社外監査役を子会社の監査役にする場合は、上記3)4)は当てはまらない。 上記3)4)のような事実を発見すれば、親会社でそれを指摘する独立性を有しているはずであり、それができないようでは、親会社における社外監査役の資質もないということだからである。 一方、親会社の社外監査役を子会社の監査役にすれば、以下のメリットが加わる。 1’)メリット1’: 親会社の経営陣も一目置く人だから、子会社経営陣の不正行為への牽制が一層強くなる 5)メリット3: 子会社からの収奪等、親会社の不正な行為を発見する機会が増加し、親会社における牽制力が強化される 法制審の提案・議論は、「利益相反」概念に対する過剰反応の傾向が見られる(本項目以外にも、要綱案には入らなかった「子会社少数株主の保護」でフォーカスを親子間の利益相反に絞ったり、取締役会の監督機能として「利益相反の監督」を挙げるなど)。 本項目=社外監査役の要件議論については、概念としての「利益相反」ではなく、利益相反の具体的場面を想定して考えることが必要である。 本項目について、第21回部会で委員から疑問が呈された時、事務局(坂本幹事)は、「親子両方に対し善管注意義務を負う=一方を優先するわけにはいかない場合がある」としつつ、「具体的なケースは申し上げにくい」と発言した。 続けて、「一番わかりやすいものとして・・・監査役は取締役の善管注意義務違反まで見る・・・そういうところまで踏み込むということになってくると、取締役と監査役の違いを踏まえても親子での社外の兼務を認めるのは相当でない場面が生じてくる」と述べている。 これも、上記で私が述べたとおり、親会社の社外監査役であれば、そのような善管注意義務違反を発見すれば、親会社でそれを指摘する独立性を有しているはずであり、それができないようでは、親会社における社外監査役の資質もない。 野村幹事が「子会社の方で取締役が経営判断上著しく不合理な親子間取引を行っているような場合に、子会社の社外取締役(原文ママ。社外監査役か)は差止請求権を行使すべき場合でも、親会社監査役としては違う判断をするということが必要な場合もあるかもしれない」とフォローしたが、この例も、親会社・子会社とも社外監査役であれば該当しない。 要綱は、抽象的皮相的な思考で利益相反の可能性を過大視している。 具体的本質的に考えれば、親子で共通の社外監査役を置くことは、内部統制強化のメリットの方が大きいはずである。 更に、別の人材を探さなければならない実務上の困難を回避できるし、親子をトータルに理解してくれるから親子それぞれ別々の社外監査役にグループの状況を説明しなければならない非効率も回避できる。 要綱に賛成している人は、ぜひ、親子で共通の社外監査役を置くことで生じる弊害を、「具体的に」述べてほしいものだ。 PR |
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